【行政法】・解答4・田邉塾ツイッタードリル

【No.16】公務員の退職願が、それ自体で独立に法的意義を有する行為ではないから、免職事例の交付があるまでは、これを撤回することは原則として自由であるが、撤回することが信義に反すると認められる特段の事情がある場合には許されない。

○か×か。(特別区H18改)

答(     )

公務員の退職願の性質と撤回がいつまで可能かの2点を復習しておこう。判例は「退職願は、それ自体で独立に法的意義を有する行為ではないから、これを撤回することは原則として自由であると解さざるを得ず、退職願の提出に対し任命権者の側で内部的に一定の手続がなされた時点以後絶対に撤回が許されないとする論旨の見解は、明文の規定のない現行法の下では、これをとることはできない。ただ、免職辞令の交付前において、無制限に撤回の自由が認められるとすれば、場合により、信義に反する退職願の撤回によつて、退職願の提出を前提として進められた以後の手続がすべて徒労に帰し、個人の恣意により行政秩序が犠牲に供される結果となるので、免職辞令の交付前においても、退職願を撤回することが信義に反すると認められるような特段の事情がある場合には、その撤回は許されないものと解するのが相当である。」としているよ(最判昭34年6月26日)。

 

【No.17】公衆浴場営業許可の申請が競願関係にある場合には、行政庁は、先願者の申請が許可の要件を満たすものである限り、これに許可を与えなければならないが、申請に関する先願後願の関係は、権限を有する行政庁が申請の受け付けないし受理した時を基準として定めるべきである。○か×か。(特別区H18改)

答(     ×   )

後段が誤りだよ。判例は「公衆浴場の許可をめぐって競願関係が生じた場合に、各競願者の申請が、いずれも許可基準をみたすものであって、そのかぎりでは条件が同一であるときは、行政庁は、その申請の前後により、先願者に許可を与えなければならないものと解するのが相当である。けだし、許可の要件を具備した許可申請が適法になされたときは、その時点において、申請者と行政庁との間に許可をなすべき法律関係が成立したものというべく、この法律関係は、許可が法律上の覊束処分であるかぎり、その後になされた第三者の許可申請によって格別の影響を受けるべきいわれはなく、後の申請は、上記のような既存の法律関係がなんらかの理由により許可処分に至らずして消滅した場合にのみ、これに対して許可をなすべき法律関係を成立せしめうるにとどまるというべきだからである。」とした上で「先願後願の関係は、所定の申請書がこれを受け付ける権限を有する行政庁に提出された時を基準として定めるべきものと解するのが相当であって、申請の受付なし受理というような行政庁の行為の前後によってこれを定めるべきものと解することはできない。」としているよ。(最判昭47年5月19日


 

【No.18】所得税確定申告書の記載内容の過去の是正については、記載内容の錯誤が客観的に明白かつ重大であり、所得税法による方法以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合でなければ、所得税法の方法によらないで記載内容の削減を主張することは許されない。○か×か。(特別区H18改)

答(       )

判例は「所得税法が申告納税制度を採用し、確定申告書記載事項の過誤の是正につき特別の規定を設けたのは、所得税の課税標準等の決定については最もその間の事情に通じている納税義務者自身の申告に基づくものとし、その過誤の是正は法律が特に認めた場合に限る建前とすることが、租税債務を可及的速かに確定せしむべき国家財政上の要請に応ずるものであり、納税義務者に対しても過当な不利益を強いるおそれがないと認めたからにほかならない。従って、確定申告書の記載内容の過誤の是正については、その錯誤が客観的に明白かつ重大であって、前記所得税法の定めた方法以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を蓍しく害すると認められる特段の事情がある場合でなければ、所論のように法定の方法によらないで記載内容の錯誤を主張することは、許されないものといわなければならない。」となっているよ(最判昭39年10月22日)。

 

【No.19】国籍離脱の届け出が本人の意思に基づかず、かつ、父親の名義思ってなされた場合においては、その届け出は無効であるから、その後、国籍離脱を前提として行われた国籍の回復に関する許可が取り消さなければならない。(特別区H18改)

答(    ×    )

この選択肢は注意が必要だよ。判例は「本人の国籍離脱の届出が本人主張の如く、被上告人の意思にもとづかず、かつ、父の名義をもつて為された事実は原判決の確定するところであるから、本人の国籍離脱の届出は無効であり、かつ、その後、国籍離脱を前提として為された前記国籍回復に関する内務大臣の許可もまた無効であるといわなければならない。」としている。国籍離脱の届け出が無効なのだから国籍回復許可も無効などので“取消し”の対象ではないよね。最初から行政行為の効力を有しない無効と後から行政行為の効力を取り消すのでは意味が違ってくるので注意しよう。(最判昭32年7月20日)