【憲法】・解答2・田邉塾ツイッタードリル

【No.6】憲法では各地方公共団体の条例制定権は、法律の範囲内で許されることを規定している以上、売春取締条例によって地域差が生じるような場合には、その条例の規定は、憲法に違反し無効であるとした。○か×か。(特別区H22改)

答(  ×    )

判例では「憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあっても、地域差の故をもって違憲ということはできない。」としているよ。地域は地域ごとの性質の違いがあって条例も当然地域ごとに違ってくることを理解しておけば大丈夫(最大判昭33年10月15日)

 

【No.7】台湾住民である軍人軍属が戦傷病者戦没者遺族等援護法及び恩給法の適用から除外されたのは、台湾住民の請求権の処理は日本国との平和条約及び日華平和条約により、両国政府の外交交渉によって解決されたためであり、日本国籍を持つ軍人軍属との間に差別が生じても、憲法に違反しないとした。○か×か。(特別区H22改)

答(       )

選択肢のとおり。判例は「台湾住民である軍人軍属が援護法及び恩給法の適用から除外されたのは、台湾住民の請求権の処理は日本国との平和条約及び日華平和条約により日本国政府と中華民国政府との特別取極の主題とされたことから、台湾住民である軍人軍属に対する補償問題もまた両国政府の外交交渉によって解決されることが予定されたことに基づくものと解されるのであり、そのことには十分な合理的根拠があるものというべきである。したがって、当該国籍条項により、日本の国籍を有する軍人軍属と台湾住民である軍人軍属との間に差別が生じているとしても、それは上記のような根拠に基づくものである以上、国籍条項は、憲法14条に関する前記大法廷判例の趣旨に徴して同条に違反するものとはいえない。」としているよ。(最判平4年4月28日)


 

【No.8】旧所得税法の規定による事業所得等と給与所得との間の所得捕捉率の較差は、それが正義衡平の観念に著しく反し、かつ、それが長年にわたり恒常的に存在して租税法自体に基因していると認められるような場合であっても違憲にはならないとした。○か×か。(特別区H22改)

答(   ×    )

この選択肢はよく判例を注意していないと間違えやすいよ。判例は「給与所得の把握(捕捉)にはほとんど脱ろうがなく、その捕捉率はほぼ100%に近いのに対し、その他の事業所得、農業所得等の申告所得の把握(捕捉)は給与所得ほど完璧なものではなく、従前よりある程度の脱ろうが存し、両者の捕捉率には、かなりの長期に亘りある程度の格差が存在しているものと認められるが、その格差の程度は、被告の主張するように僅少にしかすぎないとは俄かに即断し難いものの、原告の主張する如く著しい格差であるとも認めることができないものであるところ、かような所得の把握(捕捉)の不均衡の問題は、本来、法律制度上の問題ではなく、税務行政執行上の事実上の問題であると解するのが相当であり、捕捉率の格差が法律所定の制度に基因し、それが恒常的、かつ、正義の観念に反するほど極めて著しい場合は格別、少なくとも、前叙のような程度の本件の場合においては、未だ法的評価に親しむ問題になっていると解することはできないものである。」としている。つまりサラリーマンと自営業者の間で所得捕捉率に較差があるのはそもそも行政執行上の事実上の問題であること(とすれば法律上の争訟を扱う裁判所の判断になじまないよね。)としているんだ。ただ、その較差が法制度そのもの問題として正義の観念に反するような極めてひどい場合は違憲の可能性もあるというのが「格別」の意味になるよ。(最大判昭60年3月27日)

 

【No.9】禁錮以上の刑に処されたため地方公務員法の規定により失職した者に対して一般の退職手当を支給しない旨を定めた香川県職員退職手当条例の規定は、私企業労働者に比べて不当に差別しているとして、無効であるとした。

○か×か。(特別区H22改)

答(    ×    )

判例はまったく逆の結論となっているよ。判例は「地方公務員の地位の特殊性や職務の公共性、我が国における刑事訴追制度や刑事裁判制度の実情の下における禁錮以上の刑に処せられたことに対する一般人の感覚などに加え、条例に基づき支給される一般の退職手当が地方公務員が退職した場合にその勤続を報償する趣旨を有するものであることに照らせば、条例の規定の目的には合理性があり、同号所定の退職手当の支給制限は目的に照らして必要かつ合理的なものというべきであって、地方公務員を私企業労働者に比べて不当に差別したものとはいえないから、同号が憲法13条、14条1項、29条一1項に違反するものでない」としている(最判平12年12月19日)

 

【No.10】 地方公務員に採用された外国人から管理職選考の受験の機会を奪うことは、外国籍職員の管理職への昇任のみちを閉ざすものであり、憲法に違反する違法な措置であるとした。○か×か。(特別区H22改)

答(   ×    )

判例はまったく逆の結論となっているよ。判例は「普通地方公共団体が,公務員制度を構築するに当たって,公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも,その判断により行うことができるものというべきである。普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり,上記の措置は,労働基準法3条にも,憲法14条1項にも違反するものではないと解するのが相当である。」としている。(最大判平17年1月26日)