【No.1】ルソーは,『社会契約論』においてフランスの絶対君主制を強く批判したが,当時流行して いた急進的な人民主権論には懐疑的な立場をとり,さらには,英国の国民を想定しつつ,「選挙 の期間中には自由であるが,選挙が終わってしまえば奴隷の身分となる」と述べるなど,代表制 民主主義にも信頼を置かなかった。彼が最も重視したのは,絶対的な君主権力への抑止力として の貴族とブルジョアジーの存在であった。○か☓か (国家一般職[大卒]H24 改題)
解答:☓ 解説: J.J.ルソーは,人民が直接政治的意思を表す集会において人民が一般意思を 発見し、政治を行うべきと主張した。ルソーは直接的な人民主権論を主張しており,イギリス 議会に代表されるような代議制民主主義や貴族・ブルジョアジーによる支配に終始批判的な立 場であった。
【No.2】J.S.ミルは,デモクラシーと自由主義の橋渡しに努力した理論家であり,彼によれば,デ モクラシーは,自由という目的を実現するための手段として位置づけられる。さらに彼は,個人 の権利と利益の擁護という自由主義の理念を貫徹するためには,全ての市民が政治的意思決定に 参加する権利を持つ必要があり,選挙権なくして個人の自由は保障され得ないとして,普通選挙 制度の実現を強く訴えた。○か☓か (国家一般職[大卒]H24 改題)
解答:○ 解説: J.S.ミルは,自由という目的を達成するうえで、民主主義の役割を重視し, 具体的には代議政治を擁護した。また,選挙制度については,普通選挙制度,女性参政権,比 例代表制の実現などを強く主張した。
【No.3】トクヴィルは,ニューディール期の米国を観察し,英国政治との比較の観点から,米国の デモクラシーを高く評価した。彼は,英国流のデモクラシーには,多数者が数の力で少数者の権 利を蹂躙する「多数の暴政」をもたらす危険が内在していると指摘し,議院内閣制の下での小選 挙区制の導入は,一つの政党に立法権と行政権を同時に与え,特にその執行部に強大な権力を与 えることになるため,独裁政治を招く懸念があると指摘した。○か☓か (国家一般職[大卒] H24 改題)
解答:☓ 解説: A.ド=トクヴィルは,ジャクソン大統領時代のアメリカ(ジャクソニアン・ デモクラシー)における民主主義の発展を観察する中で,アメリカのデモクラシーには「多数 の暴政」をもたらす危険が内在するとした。しかし,同時に,アメリカでは政治参加は自由が 担保されており、陰惨な抗争となる宗教と政治の関係で政教分離がなされているため、危険を はらみつつも危険を抑えることも十分に可能であると主張した。このことからアメリカでは自 由主義と民主主義の融合し「自由民主主義」が成り立つとしたのである。
【No.4】シュンペーターによれば,デモクラシーの本質は「人民による政治」ではなく「政治家に よる統治」であり,主導権を握るべきは有権者ではなく政治家であるとした。同時に,彼は,普 通選挙制度が導入されて大衆の政治参加が進む中にあっては,政治家が特定の社会階層に限定さ れるのは望ましくなく,一般の大衆が候補者として選挙に参加し,さらには政治家として選出さ れることこそがデモクラシーにかなうと主張した。○か☓か (国家一般職[大卒]H24 改題)
解答:☓ 解説: J.A.シュンペーターは,エリート民主主義を主張し一般大衆の政治に関する 能力を信頼せず、個々の政策意思決定は困難であるが、選挙で定期的に選ぶ能力ならば十分に 備えているとした。政治そのものは政治を専門的に取り組めるプロの政治家が候補者として選 挙に参加し、選挙での競争を通じて政治家が選出される方が良いとした。
【No.5】レイプハルトは,オーストラリアやオランダなどを例に,政治文化の分断を抱えた多民族 国家であっても,比較的安定した民主政治を維持している国があることに注目し,これらの国々 ではいずれも,立法権と行政権の分立を徹底する観点から大統領制を導入し,少数派に議席獲得 の機会を保障する観点から比例代表制を導入していると指摘した。そして,この 2 つの条件を満 たす国々の政治を多極共存型デモクラシーと呼んだ。○か☓か (国家一般職[大卒]H24 改題)
解答:☓ 解説:レイプハルトの「多極共存型デモクラシー」は多民族国家で言語などが分化 している国家は選挙制度として比例代表制を採用するため多様な意見が政治に反映され結果的 に安定した政治が実現されているとした。多極共存型デモクラシーを採用する国々は,中欧諸 国(オランダ,ベルギー,スイス等)などである。連立政権と政治任用職の比例配分を実現す るため,議院内閣制が採用されやすい。議会での議席数に応じ,各党に大臣職が比例配分され る。