【行政学】・解答1・田邉塾ツイッタードリル

【No.1】ウィルソンやグッドナウが提唱した政治行政分断論は,党派政治の介入から自由な,その
意味で「政治」から分断された「行政」独自の領域を設定しようとするもので,いわゆるジャク
ソンアン・デモクラシーを理論的に支えた主張であった。我が国において官僚が国会議員と接触
することを原則として禁止する旨を定めた国家公務員制度改革基本法は,政治行政分断論の趣旨
と整合的といえる。○か☓か (国家一般職[大卒]H24 改題)

解答:☓ 解説:ウィルソンやグッドナウが主張した政治行政分断論は、米国第7代大統領の

A.ジャクソンによって導入された猟官制による弊害を反省し、能率的な行政を目標として唱
えられた理論であり、行政の党派的介入が特徴的なジャクソニアン・デモクラシーを支えたわ
けではない。また,日本の国家公務員制度改革基本法において官僚と政治家の接触を禁止して
いない。同法第5条3項1号で「職員が国会議員と接触した場合における当該接触に関する記
録の作成、保存その他の管理をし、及びその情報を適切に公開するために必要な措置を講ずる」
とされており、官僚と国会議員が接触することを前提としているよ。

 

【No.2】ギューリックが提唱した POSDCORB は組織のトップが担うべき七つの機能を示したものであ
り,そのうちの「B」は予算編成を意味している。彼の提案を受け,米国では大統領府が設置さ
れ,予算編成機能は大統領府に移管された。我が国では,予算編成を担当する主計局を内閣や首
相直属の機関へと移管する構想が幾度か打ち出されてきたが,この組織再編は実施されていない。
○か☓か (国家一般職[大卒]H24 改題)

解答:○解説: L.H.ギューリックが提唱した POSDCORB は、「計画(Planning)」「組織

(Organizing)」「人事(Staffing)」「指揮(Directing)」「調整(Coordinating)」「報告(Reporting)」
「予算(Budgeting)」を意味するんだ。特に予算(予算編成)は、米国では大統領府(大統領直
属のスタッフ(補佐)機構)が策定した予算教書が大統領によって連邦議会に提出され,議会
予算局が予算教書を基礎に予算案を策定する。日本では終戦後、行政全体を予算面から統制す
る協力な予算編成権を大蔵省から移管する構想がGHQなどにあったが、実現することなく現
在も財務省(旧大蔵省)の主計局が予算編成権を担っている。政治主導の観点から予算編成権
を内閣や首相直属の機関へ移管を試みる構想は、実施されていないよ。

 

【No.3】ピーターソンらは,手厚い福祉政策を実施している地方政府に人々が吸い寄せられて集ま
る状況を「福祉の磁石」と表現し,福祉政策の拡充は人口増をもたらし,地域の発展につながる
とした。ゆえに,全国的に福祉の水準を向上させるには,福祉政策を地方政府に委ね,地域間の
競争を促すことが効果的であると主張した。彼の主張は,介護保険の分野をはじめとして,福祉
政策の分権化を推進している近年の我が国の動向と整合的である。
○か☓か (国家一般職[大卒]H24 改題)

 

解答:☓解説: P.ピーターソンの「福祉の磁石」論は,地方政府が福祉政策を充実させると、

福祉サービスを必要とする低所得者が磁石のように当該地方に引き寄せられ,福祉支出の拡大
により重い税負担を嫌って高所得者や企業が当該地方から離れてしまい、結果として地方政府
の財政悪化となってしまうとしたんだ。この状況を恐れ地方政府は福祉政策に消極的な姿勢と
なり,全国的な福祉水準の低下に対しては、連邦政府が福祉政策を担う中心となるべきとして
いる。ピーターソンの主張は,福祉政策において地方自治体の裁量拡大など地方分権化を推進
している近年の日本の動向とは逆の関係だね。

 

【No.4】古典的組織論のライン・スタッフ理論におけるスタッフは,軍隊における参謀にならい,
管理者を補佐してこれに対する助言・勧告を行うものの,命令を発し,決裁するなどの統制権は
持つべきでないとされる。我が国の各府省における大臣官房の組織は,大臣に対して助言と勧告
を行うことを任務とし,他の部局に対する各種の統制権を行使していないので,古典的組織論に
おけるスタッフの典型例といえる。○か☓か (国家一般職[大卒]H24 改題)

 

解答:☓解説:日本における各府省における大臣官房組織は,法令、予算、人事などの観点

から省庁全体の取りまとめの役割を果たしており,ライン組織である局、部への各種の統制的
な役割を有する。例えば大臣官房の企画担当部局は省庁全体にわたる基本計画などを取りまと
める。日本の大臣官房は,古典的組織論におけるスタッフでなく,サービススタッフに該当す
る。

 

【No.5】ディモックは,能率とは,ある活動への投入(input)と産出(output)の対比であるとする
機械的な能率観を批判して,真の能率とは,組織活動に対する職員や消費者の満足感によって決
まるという社会的能率観を提唱した。我が国の会計検査では,近年,合法性の規準に加えて経済
性,効率性,有効性の三規準が導入されているが,そのうちの効率性の規準は,ディモックが主
張するところの社会的能率観と同義である。○か☓か (国家一般職[大卒]H24 改題)

 

解答:☓解説:日本の会計検査では,従来の合法性の規準に加え,経済性,効率性,有効性

という 3E の規準に基づいて会計検査を行っている。会計検査院では効率性の規準は,業務の実
施に際し、同じ費用でより大きな成果が得られないか、あるいは費用との対比で最大限の成果
を得ているか(効率性)の観点に立っているよ。これは機械的能率観と同義である。M.E.ディ
モックの社会的能率観と類似の概念は,有効性の規準である。有効性の規準は,事務・事業の
遂行及び予算の執行の結果が、所期の目的を達成しているか、また、効果を上げてるかの観点
が強調されるんだ。